遠くへ行った末に、内側へ帰る
「恩寵は満たす。だが恩寵は、それを受け入れる空白のあるところにしか入ってこられない。しかも、その空白を作るのは恩寵のほうである」
— 『重力と恩寵』「空白を受け入れること(Accepter le vide)」の章(1947年)La grâce comble, mais elle ne peut entrer que là où il y a un vide pour la recevoir, et c’est elle qui fait ce vide.
ヴェイユは、心の動きには重力のような法則がある、と考えた人です。放っておけば人は落ちる。埋め合わせを欲しがり、見返りを数え、空いた場所を何かで埋めようとする。彼女はそれを責めませんでした。法則なのだから当然だ、と。そのうえで、例外がひとつだけあると書きます。恩寵です。ただしそれは、空白のあるところにしか入ってこない。つまり、埋めてしまった人のところには来ない。だから彼女の勧めは奇妙です。努力して掴め、ではなく、掴まずにいられるか、と問う。彼女自身、教職を離れて一年間工場で働き、そこから内側へ帰ってきました。何をしても足りない気がする人に、この人は足し方を教えません。引いたままでいる時間の使い方を書いています。
「持てる力のすべてを行使しないこと、それが空白に耐えるということだ。これは自然のあらゆる法則に反している。恩寵だけがそれをなしうる」
Ne pas exercer tout le pouvoir dont on dispose, c’est supporter le vide. Cela est contraire à toutes les lois de la nature : la grâce seule le peut.
できるのにやらない。それは怠けではなく、いちばん高くつく行いのほうです。
「過ちを正そうとするなら、意志によってではなく、注意によってすること」
Essayer de remédier aux fautes par l’attention et non par la volonté.
決意を新たにする前に、その失敗をもう一度よく見る時間を取る。順番が逆でした。
「見つけようと欲してはならない。過剰な献身の場合と同じで、努力の対象に依存するようになってしまう」
Il ne faut pas vouloir trouver : comme dans le cas d’un dévouement excessif, on devient dépendant de l’objet de l’effort.
探すのをやめている時間を、一日のどこかに十分だけ作る。出てくるのはたいていそこです。
「苦しまないこと、より少なく苦しむことを求めるのではなく、苦しみによって変質させられないことを求めよ」
Ne pas chercher à ne pas souffrir ni à moins souffrir, mais à ne pas être altéré par la souffrance.
目標を「痛みをゼロにする」から「痛い間も自分の判断を手放さない」に置き換える。
「人が誰かを少しでも多くでも必要としていると示したとたん、その相手が遠ざかるのはなぜか。重力である」
Pourquoi est-ce que dès qu’un être humain témoigne qu’il a peu ou beaucoup besoin d’un autre, celui-ci s’éloigne ? Pesanteur.
相手が薄情だったのではない。そちらへ落ちる力が働いている、と一度だけ考えてみる。