哲学者図鑑
情・変・己・先
燃える理想家

遠い理想のために、今日を燃やせる

ヘルマン・ヘッセの似顔絵

ヘルマン・ヘッセ

1877年〜1962年(ドイツ/スイス) / 卵を破らねば、生まれない

「鳥は卵の中からぬけ出ようと戦う。卵は世界だ。生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない」

— 『デミアン』第5章

Der Vogel kämpft sich aus dem Ei. Das Ei ist die Welt. Wer geboren werden will, muß eine Welt zerstören.

生まれるために、彼は一つの世界を壊さねばならなかった。
意匠:割れた卵の殻を手に持っている

あなたへ

いい助言はもう十分もらった、という気がしていませんか。正しいことを言われているのは分かる。それでも身体が動かない。ヘッセはそれを、あなたの怠けだとは考えませんでした。知識は人から人へ渡せるが、智慧は渡せない。だから他人の答えは、どれだけ正しくても、あなたの中では効かない。彼が書き続けたのは「自分の中からひとりでに出てこようとするもの」を生きることだけでした。それが、いちばん難しいことでもあると認めながら。

この人はこう考えた

他人の教えでは悟れない、とヘッセは繰り返し書いた。誰かの成功のやり方をなぞっている限り、その人の世界の中にいることになるからだ。外へ長く旅した末にたどり着くのは、たいてい自分の内側である。彼にとって孤独は弱さではなく、自分だけの道を見つけるために必要な材料だった。

こういうときは、この言葉

自分の道が、まだ見つからないとき

「どの人間の人生も、自分自身へ向かう道であり、その道の試みであり、一本の細道の指し示しである。誰ひとり、完全に自分自身であったことはない。それでも誰もが、そうなろうとしている」

Das Leben jedes Menschen ist ein Weg zu sich selber hin, der Versuch eines Weges, die Andeutung eines Pfades. Kein Mensch ist jemals ganz und gar er selbst gewesen; jeder strebt dennoch, es zu werden

— 『デミアン』序文

到達した人はいない、と最初のページに書いてある。途中であることは、失敗ではない。

いまの場所を出たいのに、踏み出せないとき

「鳥は卵から抜け出ようと戦う。卵は世界だ。生まれようとする者は、一つの世界を壊さなければならない」

Der Vogel kämpft sich aus dem Ei. Das Ei ist die Welt. Wer geboren werden will, muß eine Welt zerstören.

— 『デミアン』第5章

壊すのは他人の世界ではない。自分がそれまで安全に暮らしていた殻のほうである。

やりたいことが分からない、と言われるとき

「私はただ、自分の中からひとりでに出てこようとするものを生きてみたかっただけだ。なぜそれが、あれほど難しかったのか」

Ich wollte ja nichts als das zu leben versuchen, was von selber aus mir heraus wollte. Warum war das so sehr schwer?

— 『デミアン』第5章

立派な目標の話ではない。勝手に出てこようとするものに従うだけのことが、いちばん難しいと書いている。

正しい助言をもらったのに、動けないとき

「知識は伝えられる。しかし智慧は伝えられない。見つけることはできるし、生きることもできる。だが、言葉にして教えることはできない」

— 『シッダールタ』最終章「ゴーヴィンダ」

だから彼は、教えを説く人ではなく渡し守になった。人の答えが自分に効かないのは、もともと当たり前だった。

入口になる本

入口
デミアン
ヘルマン・ヘッセ/高橋健二 訳(新潮文庫)
「今の自分の殻を破りたいが、破り方が分からない」ときに、言葉のほうが先に来てくれる。
まず読むなら序文から。全体の主題が、最初の1ページに置かれている
読み終えると「殻を破る」が比喩ではなく、具体的に何を壊すことなのかが分かる
向かないのは前向きな行動計画を求める人には向かない。物語は迷いのまま進む
本命
シッダールタ
ヘルマン・ヘッセ/高橋健二 訳(新潮文庫)
教えを受け取ることと、自分で体験することの違いが、物語のまま腑に落ちる。
まず読むなら前半の「ゴータマ」の章から。ブッダに会い、それでも弟子にならない場面
読み終えると人の助言が自分に効かない理由を、自分を責めずに説明できるようになる
向かないのは具体的な方法を求める人。答えは体験の側にあると、最後まで言い続ける
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