哲学者図鑑
理・変・己・先
孤高の建築家

まだ無い秩序を、一人で組み立てる

ライプニッツの似顔絵

ライプニッツ

1646年〜1716年(ドイツ) / あなたは宇宙の鏡

「モナドには、物が出入りするための窓がない」

— 『モナドロジー』第7節

Les Monades n'ont point de fenêtres, par lesquelles quelque chose y puisse entrer ou sortir.

窓がないのに、その中には宇宙が全部映っている。
意匠:窓のない小さな球体を無数に従えている

あなたへ

自分の代わりなんていくらでもいる、と思っていませんか。仕事も、役割も、たぶん誰かが埋める。それは半分当たっています。ライプニッツが言うのは、機能の話ではありません。あなたが立っている一点から見える宇宙は、他の誰の位置からも見えない、という話です。同じ町でも、北から見るのと南から見るのでは別の町に見える。あなたが見ている景色は、代わりが利かない。優れているという意味ではなく、ただ、そこにしかないという意味で。

この人はこう考えた

世界は「モナド」という、それ以上分けられない無数の存在からできている、とライプニッツは考えた。モナドには窓がなく、外から何かが入ってくることはない。それぞれが自分の位置から宇宙全体を映している。誰かと比べる必要がないのは、そもそも同じ景色を見ている人が一人もいないからだ。

こういうときは、この言葉

自分だけ違う景色を見ている気がするとき

「同じ町でも別の方角から眺めればまるで違って見え、いくつもの町があるかのようだ。同じように、無数のモナドの数だけ違う宇宙があるが、それらは一つの宇宙を、それぞれの視点から見た眺めにすぎない」

comme une même ville regardée de différents côtés paraît toute autre, et est comme multipliée perspectivement ; il arrive de même, que par la multitude infinie des substances simples, il y a comme autant de différents univers, qui ne sont pourtant que les perspectives d’un seul selon les différents points de vue de chaque Monade.

— 『モナドロジー』第57節

話が噛み合わないとき、どちらかが間違っているとは限らない。立っている場所が違うだけのことがある。

自分には何の役目もないと感じるとき

「すべての被造物が互いに結びついているため、一つひとつの単純な実体は、他のすべてを映し出す関係を持つ。それゆえそれは、宇宙を映す生きた永遠の鏡である」

chaque substance simple a des rapports qui expriment toutes les autres, et qu’elle est par conséquent un miroir vivant perpétuel de l’univers

— 『モナドロジー』第56節

あなたの位置からしか映らない宇宙がある。代わりが利かないとは、優れているという意味ではなく、そういう意味である。

いまが何にもつながっていない気がするとき

「単純な実体の現在の状態は、その前の状態から自然に続いている。それゆえ現在は、未来をはらんでいる」

tout présent état d’une substance simple est naturellement une suite de son état précédent, tellement que le présent y est gros de l’avenir

— 『モナドロジー』第22節

「はらむ(gros de)」は妊娠を指す言葉。まだ見えないだけで、すでに中にある、という言い方をしている。

みんなと違うことが、不安なとき

「それは、できるかぎり多くの多様さを、できるかぎり大きな秩序とともに得るための手立てである。つまり、できるかぎりの完全さを得るための手立てである」

c’est le moyen d’obtenir autant de variété qu’il est possible, mais avec le plus grand ordre, qui se puisse, c’est-à-dire, c’est le moyen d’obtenir autant de perfection qu’il se peut

— 『モナドロジー』第58節

バラバラであることは、秩序の失敗ではない。彼の世界では、違いの多さそのものが完成度だった。

入口になる本

本命
モナドロジー・形而上学叙説
ライプニッツ/清水富雄・竹田篤司・飯塚勝久 訳(中公クラシックス)
「窓がない」という一語が何を意味していたのかを、原文で確かめられる。
まず読むなら『モナドロジー』から。90節あるが1節が数行なので、1時間ほどで最後まで行ける
読み終えると「代わりが利かない」という言葉が、優劣の話ではなくなる
向かないのは例え話が少なく、短い定義が続く。物語のように読みたい人には向かない
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