情・変・己・今
衝動の開拓者
説明は後でいい。まず飛ぶ
ジャン・コクトー
1889年〜1963年(フランス) / 欠点を、磨け
「公衆が君を非難するところのものを育てたまえ。それが君自身なのだ」
— 『雄鶏とアルルカン』(1918年)
Ce que le public te reproche, cultive-le, c'est Toi.
人が欠点と呼んだ場所を、彼は金で縫った。
意匠:服の傷や継ぎ当てを、あえて金で縫ってある
あなたへ
直したほうがいい、と言われてきたところはありますか。声が小さい、こだわりが強い、話が長い。言われるたびに削ってきて、それでも生きやすくならなかったなら、コクトーの順序を試してみてください。彼は、人に指摘される部分こそがあなた自身だと考えました。削るのではなく、そこを磨く。全部の分野に手を出して、どこにも属さなかった人の言うことなので、無責任には聞こえるかもしれません。ただ、彼は最後までその通りに生きました。
この人はこう考えた
詩、小説、戯曲、映画。どの分野でも一流でありながら、どこにも属さなかった人。彼は「人に批判される部分こそが、あなた自身だ」と書いた。直されるべき欠点に見えるものが、実は他人と替えのきかない印であることがある。まず見つけて、探すのは後でいい、という順序で生きた人でもある。
こういうときは、この言葉
悩みが片づいても、また次の悩みが来るとき
「結局のところ、すべては何とかなる。ただ、生きることの難しさだけは、何とかならない」
En fin de compte, tout s’arrange, sauf la difficulté d’être, qui ne s’arrange pas.
— 『ぼく自身あるいは困難な存在』(La Difficulté d’être)6ページ
解決しないものがある、と認めた本である。だから読むと、なぜか少し楽になる。
親や恩師に、進む道を認めてもらえないとき
「泉は、川がたどる道筋を、たいてい認めない」
La source désapprouve presque toujours l’itinéraire du fleuve.
— 『秩序への回帰』(Le Rappel à l’ordre、1926年)430ページ
出てきた場所と、流れていく先は違っていい。認められないことは、間違っている証拠ではない。
都合の悪いことに、気づかないふりをしてしまうとき
「多くの人は盲目に生まれてくる。そしてそれに気づくのは、まっとうな真実に目を突き刺される日だけだ」
Beaucoup d’hommes naissent aveugles et ils ne s’en aperçoivent que le jour où une bonne vérité leur crève les yeux.
— 『地獄の機械』(La Machine infernale)77ページ
オイディプスを題材にした戯曲の一節。見えていなかったと知る日は、たいてい選べない。
入口になる本
入口
ぼく自身あるいは困難な存在
ジャン・コクトー/秋山和夫 訳(ちくま学芸文庫)
自分の欠点や生きづらさを、直す対象ではなく素材として見る目つきが手に入る。
まず読むなら冒頭の短い章から。1章が数ページの断章集なので、どこから開いてもいい
読み終えると自分の欠点や生きづらさを、直す対象ではなく素材として見る目つきが手に入る
向かないのは体系立った人生論を求める人。話題は身体、友情、化粧、死へと飛ぶ
本命
恐るべき子供たち
ジャン・コクトー/中条省平 訳(光文社古典新訳文庫)
閉じた世界で生きる者の美しさと危うさが、そのまま書かれている。
まず読むなら第1部から順に。短い小説なので、一気に読んだほうが世界に入れる
読み終えると閉じた関係の心地よさと危うさが、両方いっぺんに分かる
向かないのは登場人物に共感して読みたい人。彼らは最後まで、外の世界に出てこない
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