情・変・他・先
願いの伝道者
叶わないと分かっていても、語り続ける
エルンスト・ブロッホ
1885年〜1977年(ドイツ) / まだ、ないだけ
「まだ-ない(Noch-Nicht)」
— 『希望の原理』
彼が書いていた言語を読める読者は、その国に一人もいなかった。
意匠:書き上げた原稿を、誰もいない客席に向けて読んでいる
あなたへ
期待しないほうが楽だ、と思っていませんか。期待して裏切られるくらいなら、最初から何も待たないほうがいい。ブロッホはその態度に、はっきり反対しました。彼が大著を書いたのは亡命先のアメリカで、しかも書いたのはドイツ語。読める読者は一人もいませんでした。それでも書いた人が「希望することは、学べる」と言っています。能力の話ではなく、練習の話です。あなたは失敗したのではなく、まだ完成していない。彼が常勤の職を得たのは、63歳のときでした。
この人はこう考えた
亡命先のアメリカで、彼はドイツ語で大著を書き続けた。当時それを読める読者はどこにもいない。それでも書いたのは、人間には抑圧されても消えない「もっと良くなりたい」というエネルギーがあると信じたからだ。彼の哲学は一語に凝縮される ──「まだ-ない」。あなたは失敗したのではなく、まだ完成していないだけである。常勤ポストを得たのは63歳のときだった。
こういうときは、この言葉
期待しないほうが楽だ、と思ってしまうとき
「大切なのは、希望することを学ぶことだ。希望の仕事は断念しない。それは失敗にではなく、成就に恋している」
Es kommt darauf an, das Hoffen zu lernen. Seine Arbeit entsagt nicht, sie ist ins Gelingen verliebt statt ins Scheitern.
— 『希望の原理』序文
希望を「持つ」ではなく「学ぶ」と書いている。生まれつきの性格ではなく、身につけられるものだという立場である。
理由もなく落ち着かない日が続くとき
「足元が揺れている。なぜなのか、何によってなのかも分からない。この状態が不安であり、それがはっきりした形をとると、恐れになる」
Der Boden wankt, sie wissen nicht warum und von was. Dieser ihr Zustand ist Angst, wird er bestimmter, so ist er Furcht.
— 『希望の原理』序文
不安と恐れを分けている。何に怯えているのか名前がつけば、それは恐れに変わる。恐れは、まだ扱える。
希望を持つこと自体が怖いとき
「希望は恐れの上に位置している。恐れのように受け身ではないし、無の中に閉じ込められてもいない」
Hoffen, über dem Fürchten gelegen, ist weder passiv wie dieses, noch gar in ein Nichts gesperrt.
— 『希望の原理』序文
希望は楽観ではない。彼にとってそれは、恐れを下に見る位置から始まる能動的な作業だった。
入口になる本
本命
希望の原理
エルンスト・ブロッホ/山下肇ほか 訳(白水iクラシックス・全6巻)
1400ページ。読み切る本ではなく、折れそうな日に開く本として持っておける。
まず読むなら序文だけでいい。数ページで、この本が何のために書かれたかが分かる
読み終えると「まだ実現していないこと」を、失敗ではなく未完成として扱えるようになる
向かないのは全6巻1400ページ。読み切る本ではない。折れそうな日に開く本として持つもの
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